還る日（return to hometown）

　人生を振り返るのはまだ早いと思っていた。然しながら普段のスナップ写真からは、私の人生を振り返らざるを得ない明確なメッセージが立ち上がっていた。
　富山市に居住する私は、毎週末を90歳の母を訪ねて県の東端にある実家までを往復、母との買い物ついでに花の見頃の場所などを巡っては帰るという繰り返しである。
　少し遠出をして、北アルプスから富山湾を望む場所に立つ。近所でも海沿い、また山沿いを散策する。そして後で見る写真に不意に慄く。足元には圧倒的な水の存在感が。
　海から蒸発した水蒸気が北アルプスに降雪、融けた滴が大河となり一気に富山湾に流れ込んで行くという水の循環。毎週末、人生の早廻しの如く循環している自分。私たちも循環する水の粒子のように、この世で一瞬のみ光る粒子となっては点滅を繰り返しているのであろう。
　12葉の写真は富山市街から実家へ向かう東方へと並べ、時計廻りに円環させた。60年で一巡する還暦の意味合いも感じていただければ幸いである。
　私は今年還暦を迎えます。